富山大学には和漢薬領域において先進的研究が行われている「和漢医薬学総合研究所」があり、西洋医学・東洋医学を横断的に学べる環境が整っています。私は漢方に対する漠然とした興味を動機に、全国でもトップレベルの和漢薬教育を受けられる富山大学を志望し、薬学部(6年制)で和漢薬に関する知識を幅広く学びました。大学卒業後は、さらに高度かつ専門的な知識の習得を目指して大学院へ進学し、現在に至ります。
所属研究室の教授から紹介していただいたことがきっかけです。以前から企業で行われる研究と大学で行われる研究の差異について興味を持っていた私にとって、在学中に製薬会社での職業体験が行えるインターンシップ制度は魅力的でした。また、企業の研究者の方々との交流を通じて、研究室に閉じこもっているだけでは狭くなりがちな視野を広げたいという想いもあり、参加を決めました。
インターンシップ先では、研究の手技に関しては私が大学で行っているものとほぼ同じでした。しかし企業における研究は、薬局方等の公定法で定められたルールに基づいて行われていることが印象的でした。研修の中で植物や漢方に関する新たな知識が必要な場合は、まずは能動的な勉強や情報収集を行い、その上で指導していただいた方との討論や実験方法の設定に参画するよう努めました。
- インターンシップ先:
- クラシエ製薬株式会社 漢方研究所
- 研修期間:
- 2013年9月30日~11月8日
- 内容:
- 生薬の分析試験
- 日本薬局方に基づいた微生物試験(生菌数試験、特定微生物試験)および特定菌種の迅速測定法の確立に向けた実験
- 系統分類学的手法によるDNA試験
私が参加したのは、日本でも数少ない漢方研究所をもつクラシエ製薬(株)での研修でした。漢方について大学で一通り学んだつもりではありましたが、クラシエ製薬(株)には高度な知識と技術を持ち合わせた漢方のプロフェッショナルが集まっておられて驚きました。2ヶ月ほどの期間ではありましたが、最先端の製薬企業でのインターンシップを通して新しい知識を身につけられ、大変有意義な時間を過ごすことができました。
大学の研究室では土日やお盆・正月関係なく、自分のペースで研究を進めるのが一般的です。一方クラシエ製薬(株)では、午前8時半始業、昼休みを挟み午後5時終業と労働時間が明確に設定されているため、常に時間の使い方を意識しながら作業を行いました。“給料をいただきながら働くとはどういうことか”という現実的な側面について考えるきっかけになりました。
インターンシップ中は各々に与えられた研究テーマに沿って実験を進めました。そして実験結果についてクラシエ製薬(株)の担当の方とディスカッションをさせていただく機会が多々ありました。長い時間を共にしている大学の研究仲間とではなく、多様なバックグラウンドを持つ研究者の方々と研究に関する討論を重ねられたことは大変新鮮な体験であり、インターンシップにおける大きな収穫となりました。
現時点でははっきりとした進路について決めかねていますが、今まで学んだ和漢薬と西洋医学の両方の知識を活かして研究者として生きていきたいと考えています。どのような職業に就いたとしても、常に知的好奇心を持って原因を見出そうとする“研究者としてのマインド”を持ち続けたいと心に誓っています。
研究テーマ:
真核生物RNAポリメラーゼⅡのリン酸化制御を介した転写活性調節の解析
研究室の雰囲気:
実験や研究は、教授から助言をいただいたり研究室仲間と知識交換を行いながら熱心に取り組み、研究室対抗のスポーツ大会やパーティなどのイベントの際は、和気あいあいと楽しむなどメリハリのある研究室生活を楽しんでいます。
研究室に配属されてからは、休日の大半も実験や勉強のために費やすことが多くなりました。休み時間はリラックスのために、好きな音楽や録音したラジオ番組を一人でゆっくり聴いていることが多いですね。
お気に入りスポットは研究棟の屋上です。晴れた日には、気持ちの良い陽射しの下でひなたぼっこをすることもあります。また夏場には、運が良ければ遠くで打ち上げられる花火を楽しめます。実験で忙しい夏場の気分転換になりますよ。