教員コラム~TOM'S薬箱~

新型インフルエンザの流行

1997年に、香港で3歳の小児がインフルエンザに感染して亡くなり、その小児からこれまで知られていなかった鳥由来のインフル工ンザウイルス(H5N1)が見つかりました。そして、その年に18名が感染し6名が死亡していることが判明しました。香港では、感染源となったニワトリ140万羽を処分してこの騒動は終息しました。これ以降、新型インフルエンザの発生が一段と懸念されることとなりました。その後、H5N1は渡り鳥を介してユーラシア全域に拡がり、これまでに感染者は400名を超えその約6割が死亡しています。このH5N1ウイルスがヒトの聞で流行することが懸念され、新型インフルエンザ対策が立てられてきました。
今回流行している新型インフル工ンザに関しては、メキシコでの流行が公式に発表される直前に、米国疾病対策センター(CDC)から豚由来のインフルエンザの人への感染に関して発表されました。その後2009年メキシコで大きな流行を起こし、世界中に広がりました。なぜ豚由来かというと、図のようにA型インフル工ンザウイルスの、8本の遺伝子のうち5本が豚インフル工ンザ由来だからです。このウイルスは、海外では、広範な流行を起こしている「パンデミツク(H1N1)2009」と呼ばれています。本来の遺伝子型からすれば、ソ連型と同じH1N1なので新型ではないのですが、わが国では、「新型インフルエンザ」と呼ばれています。
さて、季節性インフルエンザでは、例年1000~1500万人が感染し、1~1.5万人が亡くなっています。高齢者、基礎疾患を有する方、妊婦と小児はハイリスクグループです。感染予防対策として、それらの方に対して感染阻止より重症化阻止効果を期待して、季節性・新型ワクチンの接種が行われています。 感染予防に関してマスクは感染を5分の1に減らすとされ、マスクによる病原体侵入を防ぐというより、マスクにより粘膜面の乾燥を防ぎ、粘膜の防御能を保つためと考えられます。
また、口腔内衛生は、ウイルスの活性化を保進するタンパク分解酵素量を減らし、インフルエンザ感染を10分の1に減らすだけでなく、老人の肺炎を予防するとされています。65歳以上の高齢者のほとんどは、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの接種を受けておくことも勧められます。
新型インフルエンザは、高齢者の一部を除き免疫がないので、全員が感染すると思われます。職場などでは、夏休みなど機能を維持しながら順次休暇を取るように、インフルエンザに対して予防に心がけ、集団で一度に感染しないで時間を避けて感染して、社会機能を維持しながら流行期を乗り切ることが望ましいです。
最後に、感染した場合に軽症で早く回復しようとすれば、以下の方法が考えられます。インフルエンザウイルスの増殖時間(感染してから子孫ウイルスを産生・放出するまで)は約6時間です。したがって、インフルエンザ患者がまわりに出れば、朝と夕方に熱を測り、インフル工ンザ感染を半日早く気づくことで、(特に早期は短期間に増加するので)ウイルス増殖の1サイクル分早めに治療を開始し、ウイルス量が少ないうちにウイルス増殖を抑えこみ、軽症で早く回復することを目指したいです。

(大学院医学薬学研究部 教授 白木 公康)