教員コラム~TOM'S薬箱~

ジェネリック医薬品をご存じですか?

医師の診察を受け、処方される薬の多くは、製薬会社が10~15年の年月をかけ、数百億円もの投資をして開発した「先発医薬品」といわれるものです。これに対して、後発医薬品である「ジェネリック医薬品」は、その特許期間が過ぎた後、同じ有効成分を含み、飲み方も効果も同じ医薬品として製造・販売される薬のことです。少し前までは、先発医薬品の特許権がなくなるとゾロゾロたくさん出てくるので「ゾロ」や「ゾロ薬」と呼ばれていましたが、商品名でなく有効成分名を指す一般名(generic name)で処方されることが多い欧米にならい、「ジェネリック医薬品」と呼ばれるようになりました。ただ、同じものを作ればよいというわけではなく、厚生労働省に、有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果が、先発医薬品と同じであることを新たに申請しなくてはなりません。しかしながら、有効性・安全性については既に先発医薬品で確認されているので、クリアしなくてはいけない試験が少なく、開発期間が平均約3年と短いので、研究開発費用も当然少なくなり、薬の値段が安くなることになります。
ジェネリック医薬品の薬代を平均すると、先発医薬品の約半額で、特許の切れた医薬品をすべてジェネリック医薬品に変更すると、日本の医療費を年間で約1兆円も節約できるといわれています(表参照)。しかしながら、ジェネリック医薬品は、なかなか普及していません。医師や薬剤師からは、「本当に先発品と同じ効果が得られるのか不安だ」という声も聞かれ、また、生産が間に合わなくなって、元の先発医薬品に戻さなくてはならない場合があるといった問題も生じています。そのため、現在、厚生労働省は、ジェネリック医薬品メーカーに、「情報提供を速やかに行う」「供給を安定化する」「品質を確保する」ことを徹底するように通達し、不安や問題の解消に努めています。さらに、ジェネリック医薬品使用促進のため、今年の4月から、処方箋の形式が変更になり、「後発品への変更不可」欄に医師のサインがなければ、患者の希望で薬が選べるようになりました。「くすりの都」といわれる富山県は、医薬品生産量が全国4位であり、ジェネリック医薬品に関わっている製薬会社もたくさんあります。そこで、富山県も、ジェネリック医薬品の利用促進事業を行っており、平成18年には、「ジェネリック医薬品採用マニュアル」を発刊し、利用推進法を全国に紹介しています。また、皆さんもお気づきかもしれませんが、富山市の城址公園前のビルには、富山のジェネリック医薬品メーカーが利用促進のために「あなたが選ぶジェネリック」という標語を大きく掲げています。
まだまだ、知られていないジェネリック医薬品ですが、処方箋を持って薬局に行くことがあれば、ぜひ、薬剤師と相談してみてください。また、これからは患者が自分で薬を選ぶ時代になることから、安心してお薬を飲むためにも、いつも行く薬局を決め、かかりつけ薬局として利用することが大切です。