教員コラム~TOM'S薬箱~

メタボリックシンドローム

戦後、日本人の食生活が欧米化し、また、自動車の保有率が増える(運動不足)とともに、糖尿病など生活習慣病の患者数が激増(表1)。その結果、脳血管障害や虚血性心疾患など、いわゆる動脈硬化性疾患が増加しています。一方、保健衛生の改善や医療の進歩に伴い、日本人の平均寿命は男性女性共に世界一となり、高齢化社会が加速化しています。このことはすなわち、脳血管障害や虚血性心疾患に罹患した高齢者が多くなっていることを示しており、実際、ねたきりになった患者数が増加しているのが現状です。したがって、高齢者になっても日常生活が自立してできる百寿者になることが大切であり、そのためには生活習慣病の予防がきわめて重要です。

主な生活習慣病は(表1)に示したとおりですが、最近話題になっているのは、肥満、特に内臓脂肪肥満に基づくメタボリックシンドローム(表2)という病態です。臍周囲径が基準値以上であるということは、内臓脂肪が増えていることを意味します。最近の研究で、脂肪細胞は単に過剰のエネルギーを蓄える貯蔵細胞としてだけでなく、様々なホルモンを分泌して生体機能を調節するきわめて重要な役割を果たしていることが明らかとなってきました。そして、内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて細胞が大型化しており、この大型化内臓脂肪細胞から、糖尿病、高血圧、高脂血症や動脈硬化などの原因となる悪玉ホルモン(TNF-αやPAI-1など)が大量に分泌されるようになるのです。従って内臓脂肪肥満状態が続くと、生活習慣病である糖尿病や高血圧、高脂血症が重複して発症し、心筋梗塞や脳梗塞などを発症させることになります。

メタボリックシンドロームを予防するには、まず、肥満を解消することがきわめて重要です。内臓脂肪の蓄積は比較的短期間で減少することがわかっていますので、過食を控え(特に飽和脂肪と砂糖の制限)、歩行運動(食後30分から1時間で開始し、20~30分間歩行する)を励行すれば、適正体重(表3)が維持され、内臓脂肪が減少し、メタボリックシンドロームはきっと予防できるはずです。禁煙ともに、日々の生活習慣を改善し、百寿者をめざして元気に過ごしましょう。がん検診も忘れずに!

富山大学附属病院 代謝・内分泌内科診療教授 浦風 雅春)

表1 我が国における生活習慣病患者の推定人数
表2 メタボリックシンドロームの診断基準
表3 適正体重と肥満の判定