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Department of Cancer Cell Biology, University of Toyama

研究内容

がん悪性化を制御する細胞内シグナル伝達系の解析主要論文リスト
1)炎症性シグナルによるがん悪性化の分子機構の解明
 がん悪性化機構には炎症シグナルが関与しており、特にがん微小環境内における炎症性サイトカインTNF-αの役割が注目されています。我々は、プロテインキナーゼTAK1がTNF-αで活性化され、転写因子NF-κBやMAPキナーゼ経路を制御することを明らかにしてきました。現在、その活性化の分子機構を解明するとともに、TAK1が関与する新たな細胞内シグナル経路の探索を行っています。また、新たに見出したシグナル経路の腫瘍内での役割にも注目しています。

2)がん分子標的の活性調節機構の解明

 EGFRやErbB2などのErbB受容体ファミリーは、肺がんや乳がん治療の分子標的であるにもかかわらず、その活性調節機構については不明な点が多く残されています。我々は、TNF-αなどの炎症シグナルがEGFR機能を制御していることを明らかにしてきました。現在、その分子機構と生理機能の解析を進めており、がん分子標的薬に対する獲得耐性の克服など、がん治療分野への新たな情報提供を目指した基礎研究を展開しています。

■最近の公表論文

Zhou Y. et al.,
Crucial roles of RSK in cell motility by catalysing serine phosphorylation of EphA2.
Nat. Commun., 6: 7679, 2015. [Open Access]


【論文概要】チロシンキナーゼ型受容体EphA2は腫瘍内で過剰発現しており、がん悪性化・進展における役割が注目されている。本論文では、EphA2のSer-897が、増殖因子や炎症性サイトカインシグナルにおいて、ERK下流のRSK1/RSK2によってリン酸化されることを明らかにした。また、このリン酸化が乳がん細胞の遊走能の制御に重要であることを明らかにした。また、RSK-EphA2経路の活性化はEGFRなどの様々な発がん遺伝子シグナルによって制御されていること、肺がん患者の予後と負に相関することを明らかにした。
Tanaka et al.,
Ligand-activated epidermal growth factor receptor (EGFR) signaling governs endocytic trafficking of unliganded receptor monomers by non-canonical phosphorylation.

J. Biol. Chem., 293: 2288-2301, 2018. [Abstract]

【論文概要】増殖因子受容体EGFRは、EGFの結合によりチロシンキナーゼが活性化され、チロシン残基の自己リン酸化により細胞内に増殖シグナルを伝達する。一方、我々は炎症性サイトカインTNF-αによる非定型的な制御を報告してきた (Singhirunnusorn et al., J. Biol. Chem., 2007, Nishimura et al, Mol. Cell. Biol., 2009)。本論文では、EGFによるEGFR活性化による細胞内輸送機構において、従来から知られている定型的制御に加えて、p38 MAPKを介してEGFRのセリン/スレオニン残基をリン酸化による非定型的制御機構の存在を示した。リガンドやチロシンキナーゼ活性に依存しない新しい輸送モデルとして注目される。
Kawasaki et al.,
Feedback control of ErbB2 via ERK-mediated phosphorylation of a conserved threonine in the juxtamembrane domain.

Sci. Rep., 6: 31502, 2016. [Abstract]

【論文概要】EGFRは、左右非対称性のホモダイマーを形成し活性化する。我々は、その片側(アクチベーター)の膜近傍ドメイン内のスレオニン残基がERKによってリン酸化されると、チロシンキナーゼ活性化阻害される負のフィードバック機構明らかにしている (Sato et al, Cancer Sci, 2013)。そこで、この論文では、ErbB2が過剰発現している乳がん細胞において、EGFRと同様にErbB2の膜近傍ドメインに保存されているスレオニン残基がフィードバック阻害に関与していることを明らかにした。
Sakurai H.:
Targeting of TAK1 in inflammatory disorders and cancer.
Trends Pharmacol. Sci., 30: 522-530, 2012. [Abstract]


【論文概要】我々は、炎症性サイトカインTNF-αシグナル伝達系の解析を行ってきた。これまでに、転写因子NF-κB活性化機構において、プロテインキナーゼTAK1がIκB Kinase (IKK) 複合体を活性化すること (Sakurai et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1998, Sakurai et al, J. Biol. Chem., 1999)、IKK複合体がNF-κB p65サブユニットのSer-536をリン酸化することなどを明らかにしてきた (Sakurai et al, J. Biol. Chem., 1999, Sakurai et al., J. Biol. Chem., 2003)。また、TAK1下流のMAPKを介してEGFRなどのチロシンキナーゼ型受容体が制御されていることなどを明らかにしてきた (Singhirunnusorn et al., J. Biol. Chem., 2007, Nishimura et al, Mol. Cell. Biol., 2009)。本論文は、上記の我々の研究成果とともに世界のTAK1研究の現状をまとめた総説である。