薬学部研究棟耐震改修工事に関して

 

 昭和50年10月に開学した富山医科薬科大学(現富山大学)において、薬学部校舎(現薬学部研究棟I)は昭和54年3月に竣工しました。以来現在まで、富山県唯一の薬学教育と研究の拠点として、数多くの卒業生がここで研鑽を積み、また最先端の研究成果がここから発信されました。しかし当時は最新設備であった当該研究棟も現在では築33年が経過し、老朽化のため教育と研究に支障が生じるようになってきております。また建物自体の耐震性も、現在の基準からは著しく劣り、学生と教職員の安全のためにも耐震改修はまったなしの状況でした。そこでここ数年間、当該研究棟の耐震改修を、大学を通して文部科学省へ要求してきました。その結果、ようやく薬学部研究棟の耐震改修が、平成24・25年度の事業として認められました。

 

 耐震改修が実現することはたいへん喜ばしいのですが、今日の社会状況では国の予算も限られ、文科省から認められた工事費は、建物自体の耐震改修とその工事に直接係る費用のみです。一方で、国からの予算措置がほとんど見込めない老朽化した設備備品の更新等にも、多額の費用がかかります。たとえば各研究室に設置されたアスベスト封入型の実験台は、現在の基準では再利用する事はできません。また実験流し台は、鉛を表面に張った旧型のものが多く、いつ鉛が流出してもおかしくない状況です。学生の安全な教育と研究のためにも、大学の法令遵守の観点からも、これらの設備備品は廃棄して、新規に基準をみたした物品に更新する必要があります。このため薬学部も自助努力として、教育と研究に使用すべき通常の予算を、一部振り替えて充当しております。もちろん大学にも資金の援助をお願いしていますが、大学全体の予算の削減も続いており、多くの支援を得るのは難しい状況です。

 

 富山大学薬学部は人類の健康と福祉に貢献すべく「先進的創薬研究者養成」と「高度な薬剤師養成」の二本柱を教育理念として、多くの薬学研究者と薬剤師の養成に貢献してきました。今後も、これまでの良き伝統を継承・発展させ、新時代の薬学部としての役割を果たし、優れた人材の育成に努める所存です。卒業生ならびに関係各位の皆様方には、富山大学薬学部の現状をご拝察の上、なにとぞご高配を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。