今後の展望
生体分子を認識できる人工分子の開発によって、生物に由来する分子と人工的に合成された分子の垣根は、ほんの少しですが低くなったと思います。もちろん生体分子を認識する人工分子を設計する際には、生体分子と生体分子の相互作用から学ぶことは尽きません。しかしながら生命は、地球という与えられた環境の中で生まれたものです。遺伝子として DNA を使用したことも、酵素などの働く分子としてタンパク質を選んだのも地球上で生まれたことの必然でもあるわけです。限られた材料しか使えなかった“その場”での最高の分子を、なんの制約もない人工の分子が、たとえ部分的にでせよ越えることは不可能ではないはずです。
“我々を含めた生命の起源は分子間の相互作用にあり、 |
その構造は地球の環境下における必然という偶然である” |
生体分子を用いることなく、石油化学の産物より出発し、生体における分子間の相互作用をまね、もし可能なら越えようとする研究の意味がそこにあると信じています。