糖尿病性血管障害のメカニズムと治療法の開発

糖尿病性血管障害のメカニズムと治療法の開発
 糖尿病は心筋梗塞や脳梗塞などの大血管合併症の発症を促進しますが、 既に境界型耐糖能障害(IGT)においても動脈硬化が進展することが知られています。 メタボリックシンドロームの病態が心血管障害などの様々な動脈硬化疾患の背景となり、 その根底をなすインスリン抵抗性が注目されています。

 また、動脈硬化性疾患に対する喫煙の危険性は強く認識されています。 動脈硬化の発症と進展には血管平滑筋の増殖異常が重要な役割を担うことから、 本研究室ではインスリン、インスリン様成長因子1(IGF-1)、血小板由来増殖因子(PDGF)が、 インスリン抵抗性病態や、煙草の主成分であるニコチンにより、 細胞増殖異常を引き起こす分子メカニズムの解明を進めています。

 ニコチンがこれらの増殖因子の作用に関与する分子メカニズムを明らかにすることで、 “喫煙数や喫煙のしかた”がどのように血管平滑筋の異常増殖を引き起こすかを 解明することをめざしています。本学医学部第二病理学教室との共同研究により、 PDGFβ受容体欠損マウスを用いて、喫煙やインスリン抵抗性病態での血管平滑筋の増殖異常に、 PDGF受容体の及ぼす役割を検討しています。 さらに、SHIP2やPTENなどのリピッドホスファターゼが、インスリン抵抗性病態と関連して、 これらの増殖因子による血管平滑筋の増殖に関与するメカニズムとその異常を明らかにすることで、 インスリン抵抗性の視点から動脈硬化の発症と進展を防止する新たな方策の開発をめざしています。