学会紀行 in サンフランシスコ(2014/6)

American Diabetes Association’s 74th Scientific Sessionsに参加して

博士後期課程2年 小野木康弘 

 
6月13日から17日までの4日間、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたに参加させていただきました。
   サンフランシスコ駅を出ると真っ青な空とにぎやかな街に出迎えられ、初日は始まりました。到着後、早速笹岡教授のoral presentationがありました。Jet lagをものともせず堂々と発表する姿や質疑応答をさらりとかわす姿はさすがだなと思いました。大半の演題がposter presentationの中、数少ないoral presentationに採択されたことは大変名誉なことであり、われわれのグループの研究が世界レベルに劣らないことを実感できました。また、笹岡先生の指導を受けた和田先生と今回同行した第一内科・石木先生もまた、かつて大学院生時代にoral presentationを経験したことを聴き、私も笹岡先生の門人の一人として、oral presentationで発表できる日を迎えられることを願って、長い初日を終えました。
 
  私は現在、新たな側面から肥満と2型糖尿病の病態解明を試みています。今回は、注目する分子を標的とした薬物治療を試みた成果とそのメカニズムに関する報告が評価され、poster presentationの中でもaudio guided posterに採択され、英語でプレゼンテーションする機会を得ました。温かい座長と興味を持って下さる聴衆に助けられ、原稿を読み上げるだけではありましたが、英語で発表する貴重な体験ができました。ADAという夢舞台で発表でき、研究者としてさらに前進できたのではないかと思います。
 日本糖尿病学会と米国糖尿病学会を比べてみると、民族性が現れているのか、それぞれの学会でトピックとなっている分野が異なり、日本がリードする分野と欧米がリードする分野とがすみ分けられていました。各国が得意とする分野を主導し、糖尿病学が深化していることが分かりました。また近年、急速に発展を遂げた中国・インドやブラジルなどの途上国でも糖尿病患者・耐糖能異常者が増加しており、今後も世界的に糖尿病人口が爆発的に増加することが予想されます。本学会ではその情勢を反映してか、学術領域でも中国の台頭が著しいことを目の当たりにしました。さらに、遺伝的背景の異なる民族の患者数の増加や悪性腫瘍の併発により、今後、糖尿病病態の多様化が懸念されます。そこで、糖尿病学だけではなく、がん、免疫学などの研究者が切磋琢磨し、学際的視点からさまざまな知見を集積していくことにより、世界的な研究水準を高めていくことが肝要であると実感しました。本学会を通して、研究者として技術力・思考力・語学力のさらなるレベルアップが求められていることを自覚しました。研究室に戻り、一人前の研究者として羽ばたく日を夢見て、そして試験管の向こうにいる多くの患者さんを想像して、一歩一歩着実に研究活動に取り組みたいと思います。

 帰国する朝、ホテルに掲げられた星条旗を見て「来年またここに戻って来る」と誓い、帰路につきました