|  ニコチン性アセチルコリン受容体は、骨格筋や神経系に広範囲に発現しており、
				神経筋または神経間のシナプス伝達を調節しています。
				ニコチン受容体は、5つのサブユニットからなるイオンチャネル内蔵型受容体で、
				サブユニット構成の違いから、筋型と神経型に大別されています。
				いずれのタイプも、神経伝達物質のアセチルコリンや、ニコチンなどのアゴニストが作用するとチャネルが開口し、
				Na+やCa2+を流入させます。
				これが引き金となって、骨格筋では収縮が引き起こされますし、
				神経細胞でも様々な機能のスイッチがONになります。
				例えば、海馬神経細胞では、記憶・学習に関わるシナプス伝達の長期増強(LTP)の促進や、
				細胞死に対する保護作用が誘発されます。
				このように、ニコチン受容体は、脳の神経活動を維持する上でも不可欠な存在であり、
				ニコチン受容体の機能異常はアルツハイマー病、パーキンソン病、
				統合失調症などの原因になる可能性も指摘されています。
  私達は、これまでに、糖尿病性神経障害や糖尿病性筋萎縮症の原因を解明していく過程で、
				糖尿病マウスの骨格筋においてニコチン受容体の活性が低下することを見出し、
				その機構に細胞内Ca2+濃度の異常上昇とそれに伴うニコチン受容体の
				脱感作が関わっていることを明らかにしました。
				また、骨格筋へのCa2+流入に神経型ニコチン受容体が関与することを実証しました。
				さらに脳神経細胞におけるニコチン受容体を介するCa2+シグナルを検討した結果、
				従来の予想を超える、長時間のCa2+動員が認められ、
				ニコチン受容体の存在意義をさらに明確にすることができました。  現在、当研究室では、脳のニコチン受容体の活性を低下させる新たな要因(ヒト遺伝子多型や細胞内分子など)
				を検討し、中枢神経疾患の発症メカニズムの解明に挑んでいます。
				また、ニコチン受容体の各サブタイプに選択的な新規化合物の探索研究も行っています。
				これらの研究を通して、中枢神経疾患の新しい治療法の開発を目指しています。 |