物理有機化学
Physical Organic Chemistry

専門教育科目

講義科目

1年・後期

選択・2単位


担当教官名

研究室名
(場所)

内線

E-mail

オフィスアワー

教授  井上 将彦

薬学部
薬化学研究室

7525

inouye

随時

(A)

授業のねらいとカリキュラム上の位置付け

有機化学は「官能基の化学」といわれている。有機反応とは官能基ごとに分類された有機分子の挙動と言い換えてもよい。たしかに有機化学の魅力の一面としては、様々な分子が見せる多種多様な反応や変化であることは否めない。しかしながらこれらの反応や変化も、物理化学、もっと根元的には物理学に矛盾するものではない。本講義は、分子の構造や変化を、量子化学と熱力学の視点から議論できる能力を養うことを目標とする。例えるなら、歩きながら1本1本の木(個々の分子)を精査する量子化学と、ヘリで上空から森全体(目に見える物質)を眺める熱力学の双方を身につけてこそ、初めて森(分子からなる物質の性質)というものを理解することができる。博物学的で経験のみに頼る有機化学は過去のものになりつつある。これから有機化学を志す学生には是非とも論理的思考力を身につけて貰いたい。そのための講義である。

(B)

達成目標

  1. 原子軌道を量子力学を基に説明できる。
  2. 共有結合を原子価結合法で記述できる。
  3. 分子軌道法を概説することができる。
  4. 分子軌道法を用いて簡単な分子を記述することができる。
  5. ヒュッケル分子軌道法を用いて芳香族化合物の安定性を説明できる。
  6. 化学平衡を質量作用の式と関連付けて説明できる。
  7. エンタルピー変化、エントロピー変化、自由エネルギー変化を概説できる。
  8. 反応速度を Boltzman 分布と関連づけて概説できる。
  9. 反応速度定数と化学平衡を関連づけて概説できる。

(C)

授業計画

  • 第 1週:量子化学概論
  • 第 2週:原子軌道
  • 第 3週:原子価結合法
  • 第 4週:分子軌道法1
  • 第 5週:分子軌道法2
  • 第 6週:分子軌道法3
  • 第 7週:ヒュッケル分子軌道法1
  • 第 8週:ヒュッケル分子軌道法2
  • 第 9週:基底状態と励起状態
  • 第10週:化学熱力学概論
  • 第11週:エンタルピー変化とエントロピー変化
  • 第12週:自由エネルギー変化と化学平衡
  • 第13週:反応速度と活性化エネルギー
  • 第14週:熱力学支配と反応速度論支配
  • 第15週:期末試験

(D)

キーワード

量子力学、原子軌道、原子価結合法、分子軌道法、ヒュッケル分子軌道法、基底状態、励起状態、熱力学、化学平衡、エンタルピー、エントロピー、自由エネルギー、反応速度、活性化エネルギー

(E)

履修上の注意

本講義は選択科目ではあるが、有機化学・生化学等、ライフサイエンスの基礎としての役割も兼ねているため「必修」科目と考えていただきたい。

(F)

教科書/参考書

  • 教科書:大船 泰史 他 訳「ブルース有機化学 第5版」上・下巻(化学同人)
  •     岩澤 康裕 他 訳「生命科学系のための物理化学」(東京化学同人)
  • 参考書:井上 将彦 他 編「コンセプトで学ぶ有機化学」(化学同人)
  •     山口 達明 著「有機化学の理論」(三共出版)
  •     中田 宗隆   著「量子化学」(東京化学同人)
  •     都筑 卓司   著「なっとくする量子力学」(講談社サイエンティフィック)
  •     吉田 政幸   著「分子軌道法をどう理解するか 第2版」(東京化学同人)
  •     早川 勝光 他 著「ライフサイエンス系の基礎物理化学」(三共出版)
  •     齋藤 勝裕   著「目で見る機能性有機化学」(講談社サイエンティフィック)
  • 啓蒙書:佐藤 勝彦 監修「『量子論』を楽しむ本」(PHP 文庫)

(G)

成績評価の方法

期末試験

(H)

関連科目

基礎有機化学 II、物理化学 I

(I)

備考

本教科はコアカリキュラム、C1(1)(2)(4) と C3(1) に対応し、薬剤師国家試験出題基準では、「I 基礎薬学」の大項目1中の中項目 Bと C に対応する。