今ある薬の“眠っているポテンシャル”を呼び覚ます
当研究室では、薬物の物性や薬物体内動態、製剤学的性質など医薬品の特性と、生体内物質の概日リズムや感受性など生体の特性を薬学的な立場から総合的に考察し、医薬品の適切な使用方法を新たに編み出していくことを目的として様々な研究を行っています。なかでも“生体リズム”に着目した研究を行っています。生体機能の様々な周期性は、ヒトを始めとする多くの生物で存在します。一個体の中には、体温や血液成分などが示す概日リズム、月単位で生じる女性の性周期、男性ホルモンの年周性変動などが混在します。特に、概日リズムは疾患や病状にも存在し、一日の中でも発作など発症しやすい時間帯が知られています。"時間薬物療法"は、地球上に生息するヒトを始めとした多くの生物に存在する各種生体内成分の生体リズムや、投薬する薬物の薬物動態や標的細胞等への親和性等の日内変動を考慮して、最適な投薬タイミングに薬物を投薬することで高い治療効果と安全性を実現する生体に優しい薬物療法です。このような薬物療法は、実際に気管支喘息や脂質異常症などで応用されており、これら以外の疾患についても臨床応用が期待されています。当研究室では、“投薬時刻”を変えるという簡潔・明快な方法によって、既存薬の“眠っているポテンシャル”を呼び覚ますことができ、現在の治療法と比較しても治療成績の向上が期待できる時間薬物療法を多くの疾患に臨床応用できるよう研究を行います。

主な研究テーマ
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時間薬物療法の臨床応用に向けた基礎研究と臨床研究
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患者一人一人に合わせた個別化時間薬物療法の構築
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医薬品の適正使用を目指した製剤修飾
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科学的なエビデンスに基づく薬物投与設計法の確立
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病態の日周リズム形成制御因子の同定による新規医薬品の創製