サイトカインによる免疫制御の仕組みを探る
私たちの研究室は、細胞に発現するタンパク質分子がシグナル伝達、代謝反応、オルガネラ機能をどのように制御し、この機能の破綻による免疫や神経系などの生体の高次生命システムへの影響が、どのように疾患に結びつくかを調べています。
TRAFやTNFファミリー分子による新しい免疫制御機構
細胞内タンパク質であるTNF receptor-associated factor (TRAF) は、哺乳類では TRAF1からTRAF7の7つのファミリー分子で構成されます。TRAFは、代表的な炎症性サイトカインである Tumor necrosis factor-α (TNF-α) およびそのファミリー分子が結合する TNF受容体の機能を調節します(図)。さらに、TRAFがTNF受容体以外の受容体にも結合し、炎症反応を調節することが最近の研究から明らかになってきました(図)。しかし、その仕組みがよくわかっていません。
TRAFファミリー分子の一つであるTRAF5は、TNF受容体の機能を制御する分子として見出されました。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)は、免疫を調節する大切な細胞であり、例えば、B細胞の抗体産生を補助します。CD4+T細胞の機能を調べていた時に、TRAF5がTNFとは別の炎症性サイトカインである Interleukin-6 (IL-6) の受容体に結合し、その機能を調節することを見出しました。さらに、TRAF5がToll様受容体(TLR)の機能を調節することも示唆されています(図)。このように、TRAF5の新しい機能を特定することで、免疫の働き方や病気が起きる仕組みの理解が進展することを目指しています。
T細胞には OX40、4-1BB、CD27、GITRなど、B細胞には CD40、BAFFR、TACI、BCMA などの TNF受容体スーパーファミリーが発現します。T細胞や B細胞は特異的に抗原を認識し、例えば、感染やがんを排除する方向へ免疫を制御します。これらの TNF受容体の機能をコントロールできる TNFタンパク質を作製し、これらをT細胞やB細胞に作用させることで、どのようにすれば免疫に関わる病気を制御できるかについて調べています。
以上の研究により、サイトカインによる未知の免疫機構を解明すること、また、サイトカインの機能を治療へ応用することを目指して日夜研究に勤しんでいます。
副腎白質ジストロフィーの分子病態
副腎白質ジストロフィーは、ペルオキシソーム膜トランスポーター ABCD1の機能欠損を原因とする難治性神経変性疾患で、大脳における炎症を伴う進行性脱髄を特徴とします。ABCD1を欠損した免疫担当細胞がどの様に脳内で神経変性の発症に関わっているのかを調べています。

主な研究テーマ
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TRAF5によるサイトカイン制御機構の解明
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TNFタンパク質による免疫制御法の確立
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副腎白質ジストロフィーの分子病態の解明