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ヤコブ病

(平成11年卒)川 西 那 奈

薬害ヤコブ病をご存知ですか?私もヤコブ 病については、大学時代に何かの講義で、 「プリオンタンパクが……という話しを聞い たくらいの記憶でしたが、就職してからヤコ ブ病のビデオを見たり、原告の方のお話しを 聞く機会があり、薬害ヤコブ病を知りました。

そして、会社を通して、薬害ヤコブ病活動に 参加したり、学習会などを開くようになりま しが、2002年3月薬害ヤコブ病訴訟の和解成 立前よりだんだんと遠のいてしまっていたの で、引っかかるものがあり、今回少しお話し させていただきたいと思います。

ヤコブ病は、発症すると急激に痴呆症状が 進み、3ヶ月から7ヶ月で「無言性無動」と呼 ばれる植物状態になってしまい、ほとんどが 2年以内に死亡するという恐ろしい病気です。 しかし日本では、交通事故や病気での脳外科 手術の際硬膜の移植を受けた人から93名 (2003年2月現在報告)のヤコブ病患者が発生 しています。

薬害ヤコブ病訴訟はヒト乾燥硬 膜「ライオデュラ」の移植によってヤコブ病 に感染した被害者・遺族が国やメーカーに対 し損害賠償を求めた裁判で、メーカーに対し ては、安全性を確保せずに硬膜を製造・輸 入・販売した責任を、国に対してはその硬膜 を輸入承認し、また危険性情報が出されても 何ら対策をとらなかった責任を追及しています。

私はこの訴訟の大津地裁での最終意見陳述 の傍聴をしたのですが、そのとき初めて、繰 り返される薬害や、薬事法、薬事行政につい て知りました。サリドマイド、スモン、薬害 エイズと薬害は繰り返され、薬事法の改正が あったのにも関わらず、また薬害ヤコブが起 ってしまいました。「今のままでは、また繰 り返される、今も知らないうちに起っている かも知れない」という危機感を覚えました。

薬剤師として働いていく中で「いつ自分が加 害者になってしまうか分からない、できる限 り自分でも情報を得、見ていく目を持たなけ れば」と思いました。 2002年3月に和解は成立しましたが、これ で終わりではありません。6月にはヤコブ病 サポートネットワークが発足しました。ここ では薬害ヤコブ病患者・家族の医療・福祉問 題の解決、生活支援、遺族の精神的サポート 等の活動を行うとともに、このような悲惨な 薬害を繰り返さないため、なぜこのような被 害が起きたのかを究明し、その上に立って、 薬害の再発防止・根絶のために必要な事業に 取り組んでいくことを目指しています。

今までヤコブ病は原因も分からず、治療法もあり ませんでしたが、抗マラリア薬の「塩酸キニ ーネ」を投与する世界初の臨床試験を開始したとの報告もあり、早期に治療法が確立され ることを期待します。

 

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