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日本一! 理想の家庭医、M先生

(43年卒)柿 崎 直 和 (第一製薬活纐業務部勤務)

世間は広い。驚くべきスーパードクターが いらっしゃるものだ。つい先日まで5年間支 店に勤務したので、たくさんのすごいドクタ ーと知り合うチャンスがあった。その中のお 一人をご紹介したい。

小生が「日本一の診療所」と称号を奉った 福島県のM先生、M診療所の所長である。何 が日本一か?と問われれば、「診療所の運営 システム」が日本一と答えたい。

近年、ビジネスの世界では、最高に権威あ る賞として企業に与えられる『日本経営品質 賞』が認知されつつある。米国で『MB(マ ルコム・ボルドリッジ)賞』として名高い賞 の日本版である。「日本に追いつき追い越せ」 と創設されたMB賞は毎年、大統領から表彰 状が手渡されることで一躍有名になった。

わ がM先生に少しのヒマがあるならば、診療所 経営の見事なお手本としてエントリーしてみ てほしいほどだが、日々の超人的診療体制を 思い浮かべると、諦めざるを得ないが、残念。 名医M先生と診療所運営のキーパーソンH 統括部長(婦長)、看護師3名、事務3名の計8 名が診療所のメンバーズ(当診療所ではスタ ッフをそう呼ぶ)。

毎日、朝8時半から夕方7 時半まで、テキパキ、ニコニコと診療してい る(従業員は交代制)。 驚くなかれ、当診療所を訪れる患者は、何 と年間7万人もいるのである!

Q:1日当 たり、さて何人の患者を診療しているでしょ うか?(計算すればすぐ分かるが、正解は、 平均200人、多い時は400人を超えることもあ る! ヒャー!)

待合室で感心するのは、実践で鍛えられた 適切な服薬指導。例えば軟膏剤や吸入剤に関 しては、自分で実際に試してみた上での説明 なので、フツーの薬剤師だったら絶対できな いほど適切。だから、患者も納得し、コンプ ライアンスもすばらしい。

また、M診療所は 病診連携も完璧である。専門外(M先生の専 門は老年科)の病気や、入院の必要な患者は、 丁寧な紹介状と電話連絡とともに、近くにあ るいくつかの大病院に紹介されるが、その紹 介患者数たるや、年間600人(毎日2人!)に 上る。

大病院にとって、紹介患者の比率が直 接経営を左右するだけに、M先生からの紹介 患者は手厚い治療が保証される。そこで患者 が喜び、M先生の信用はいよいよ高まるサイ クルができている。 開業以来、M先生とともに「患者」に対し て愛と汗と知恵を注ぎ込んで診療所の成長を 担ってきたH統括部長は、M先生の友人達か らは、診療所運営の「同士」と称賛され羨ま しがられる存在である。

メンバーズの教育、 医薬品の購入・管理、病診連携先や支払基金 との折衝(連携先からは自ら確認のため必ず 訪問。また医療事務の資格も持ち、疑問は訪 問して解決してきたので、相互信頼の関係が できている)などを一手に掌握して手際よく こなす。 一方のM先生は自らの信念に則り「正しい 診断、正しい治療」に邁進する。まさに理想 の家庭医像がそこにある。 M先生は、メンバーズを誉めたり、感謝し たり、労ったりするときに手渡す「大入袋」 をいつも用意している。

実は小生もある時、 労っていただく機会があり、思いがけず大入 袋を頂戴できたのだが、もちろんそれは小生 の宝物となっている。もったいなくて、使え るものではない。 各地で、インフルエンザが大流行と聞く。 とすれば、きょうもM診療所は数百人の患者 で込み合いながらも笑顔が飛び交い、しかし 整然と、診療が行われているんだろうなあ…。

 

 

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