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製薬会社に就職して

(H11年卒)宮 脇 美 帆

就職し、東京での生活が始まって、一年が経とうとしている。会社の寮から一時間以上、満員電車で通勤する新しい生活にも大分慣れてきた。毎日新しい発見があり、新鮮な気持ちで日々を送っている。

大学4年生のときは和漢薬研究所の病態生化学部門で、抗癌剤の転移、浸潤の抑制メカニズムの解明に関する研究に携わった。大学院では、附属病院の薬剤部研究室で、植物由来アルカロイドの生物活性についての研究を行った。植物由来の糖に似た構造の低分子アルカロイドの持つ特性を解明していくのは、とても興味のあるものであった。安定性や、濃度設定など条件設定からのスタートであったが、最終的には実際にヒトの細胞を使った実験まで行うことができた。創薬の基礎の基礎を経験することができ、有意義な学生時代であった。

現在私は製薬会社の臨床開発部に所属している。研究所で基礎研究を経て有効であると認められた製剤が、今度はヒトに投与した時に有効であるのかをみるという大規模な研究に携わることになった。これからまさに治験が始まろうとしているチームに配属になり、以前までは漠然と頭にあった治験というものの現場で毎日仕事をすることになった。学生時代にいた分野から一歩進んだ分野に入ることができ、大変うれしく思っている。 臨床開発は全国の施設で実施される。施設では、医師、薬剤師、看護婦、治験コーディネーターと密にコミュニケーションをとる。

先日あるテレビ番組で、外国の治験の様子が取り上げられていた。患者さんの治療方法が治験により大きく左右され、患者さん一人一人がこれを了解して治験に参加している様子を拝見した。治験というのはあくまで施設で行われるものであり、会社側はそのサポーターであるということを実感した。多くの患者さんの協力を得て治験は行われ、そして新しい薬ができるのだということを忘れずに仕事に取り組んでいきたい。

配属になってから、これまでほとんど乗ることの無かった国内線にも乗るようになり、驚くほど行動範囲が拡がった。スーツを着て上司に同行し、名刺を用意して病院に入る時は、社会人になったのだな思う瞬間である。これからは、専門性を深め、この仕事の特色を活かして多くの人と接し、視野の広い人間になっていきたいと思う。

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