Clinical Pharmacokinetics
医薬品安全性学研究室





研究室紹介

臨床薬物動態学講座(医薬品安全性学研究室)
教授 橋本征也

 医薬品安全性学研究室は、薬学研究科・臨床薬学専攻の基幹講座の1つとして、平成12年4月に新設されました。臨床薬学専攻は、資質の高い病院薬剤師の育成、地域医療を担う臨床薬剤師の再教育、および新たな視点を持った臨床薬学研究者の育成を、主な設置の目的としています。本講座では、これらの目標に沿って、薬剤学、生物薬剤学を基盤とする薬物動態学、臨床薬物動態学、薬物治療管理学とその関連領域の教育・研究を行ってきました。医薬品を適正に使用するにあたっては、臨床薬物動態特性と個体間変動機構を明らかにし、患者個々に投与設計を行う必要があります。医薬品の開発段階では、製薬企業の開発担当研究者が、臨床薬物動態試験を計画・実施し、基本的な医薬品情報を整備することが必須です。一方、市販後には主に臨床薬剤師が、臨床薬物動態情報を補完するとともに、薬物血中濃度測定などを行いながら、薬物治療管理・薬剤指導管理を行います。臨床薬物動態学講座では、「薬物動態と薬効・毒性の基礎と臨床、特に疾患・薬物併用・遺伝的多型に伴う薬物代謝酵素とトランスポーター機能の変動機構の解析、およびそれらに基づく薬物個別投与設計に関する研究」を掲げ、以下に抜粋するような具体的なテーマを設定して研究指導を行なっています。

 1. 薬物代謝酵素の遺伝子多型診断に基づく薬物個別投与設計:β遮断薬は心不全の治療薬として期待されていますが、患者さんの中には常用量では血中濃度が高くなり過ぎてしまう体質の方がいます。このテーマでは、このような患者さんを、薬物代謝酵素の遺伝子診断でいち早く見つけて個別に投与量を調節する研究を行っています。

 2. 腎排泄型薬物の消化管吸収機構:水溶性が高い腎排泄型薬物は消化管吸収性が悪いため、静脈内投与を行う必要があります。しかし、腎排泄を受けるにも拘わらず、消化管吸収性が良好な一群の薬物があります。このテーマでは、こうした易吸収性薬物の消化管吸収メカニズムを、実験動物や培養細胞を用いて解析することによって、薬物併用時の薬物相互作用等の予測を目指しています。

 3. 小腸における薬物初回通過代謝機構:近年、小腸における薬物代謝が、バイオアベイラビリティの個体間変動や薬物相互作用の原因として注目されています。しかし、個々の薬物に対する肝臓と小腸の初回通過代謝の寄与率などについては、殆ど明らかになっておらず、臨床薬物療法や創薬上の大きな問題となっています。本テーマでは、実験動物やヒト培養細胞を用いて、小腸における薬物代謝機構を検討しています。

 現在、薬物血中濃度モニタリングや服薬指導を担う病院薬剤師、あるいは大学病院や製薬企業などで先進医療や臨床試験を担う臨床研究・開発担当者を目指して、精力的に講義・実習・研究に取り組んでいます。当講座に興味のある方は、気軽に研究室に立ち寄って、教員あるいは先輩に詳しい話を求めて下さい。